おばあちゃんはアルツハイマー(1)
13年間在宅介護だったおじいちゃんが亡くなり
介護生活に幕が降りてから8年後、
自分の人生を楽しもうとしていたおばあちゃんは
アルツハイマーと診断された。
私と一緒に脳外科を受信し、アルツハイマーと診断される1年前
出産を控えて里帰りをしていた姉から、電話が来た。
『おばあちゃん、なんかおかしいよ』
大好きなおばあちゃんが、おかしいはずがない。
その頃、離れた場所に暮らしていた私は、姉の言葉に腹が立ち、年なんだから物忘れなんて当たり前だ、おばあちゃんに優しくしてあげろと強い言葉を浴びせた。
その頃おばあちゃんは
私に、しょっちゅう電話をかけてきた。
『さあちゃん、元気?別に用事はないの。おばあちゃんは、元気だからね。
心配しないでね。』
介護士として、経験を積めば積むほど、あの頃のおばあちゃんの電話が、おばあちゃんからのSOSだったのだと感じるようになり、思い出しては胸が痛くなる。
それから一年ほどして、始めての出産で私が大きなお腹で里帰りした時には、
おばあちゃんの表情や言動は大きく変化していた。
朝食の席で、朝ドラの主人公の名前の話になり母が先にその名前を口にすると
おばあちゃんは、茶碗をテーブルに強く叩きつけた。
その日が初めてではなかったらしく、母は『もうこんなの嫌!!!!』と
大きな声で泣き叫ぶと、外へ飛び出して行った…
今にも生まれそうな大きなお腹をおさえながら私は、母を追いかけなだめてから
おばあちゃんの所へ戻り、食器を片付けた。
おばあちゃんの表情は堅く、昔のようにあふれるような笑顔は消えてしまっていた。
(まだ生まれないでね…)
一度流産して、2年以上してやっとできた赤ちゃんをお腹に宿しての里帰り…
出産までの2ケ月間は、私がおばあちゃんや家族とぶつかり合い向き合うことになる日々のスタートラインだった。
つづく…